偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

 目をぱちくりさせながら、彼を見る。すると熱のこもった目でわたしを見つめ返してくれた。

「正直、ものすごくやせ我慢してる。だけど、欲望だけで君との最初の夜を過ごすのは、もったいなさ過ぎる。だから次回、君と過ごす特別な夜を僕が用意するから、それまで待っていてほしいんだ」

 胸がキュンと音を立てた。

 わたしとのひとつひとつのことを、ゆっくり大切に過ごそうと考えてくれている。

 態度でも、言葉でも、彼はわたしに愛情を伝えてくれる。

 それは押しつけるでもなく、奪うでもなく。包み込んでくれるような大きな愛。

 今、胸が震えるほど、幸せだ。

 うれしくてそれを伝えたいけれど、上手く言葉にならない。せめて気持ちが伝わるように、笑顔で彼を見つめた。

 すると彼は、衝動に駆られたように急にわたしを引き寄せ抱きしめた。

 浴衣越しに感じる彼の体温に、心拍数が一気に上昇する。

「た、尊さん?」

「ごめん。さっきあんなにかっこつけたのに、やっぱり君がいるのに、触れないなんて無理だ」

 ぎゅうっと腕に力が籠もる。そして耳元で小さな声で言った。
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