偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
その態度に満足した翔太は、だまったわたしに話の続きをした。
「川久保製薬の新薬の治験だが、うちの病院は降りることになりそうだよ」
「……そんな……嘘でしょう?」
長年、三島紀念病院は川久保製薬の治験に協力をしている。それが急にどうして。
「そんなこと、できるわけないです」
震える声で根拠のないことを言うのが精一杯だった。
「いや、俺にはそれができるんだ。できる立場になったんだ。なんせ、三島家の跡取りだからな」
「……っ……ひどい、どうして」
「どうして? お前もあの川久保尊もむかつくからだよ」
何か仕事上でのトラブルがあったなら理解できるが、まさか個人的な感情でこんなことを行ってはならない。そんなことは、子供でも分かるはずだ。
「お前は俺のものなのに、あの男が横取りしたんだ。それなりに罰を受けるのは当然のことだろう」
「……わたしを一生縛りつけるつもり?」
先に裏切ったのは翔太だ。院長の娘と結婚をする道を選んだのだから、わたしと別れるのは当然だ。