偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

「そんなに暴れるから余計に痛い思いをすることになったんだ。まあ優秀な医者なんだから、自分で治療できるだろう?」

 冷ややかにそう言い放つと、尊さんはわたしの方を振り向いた。

「見苦しいところを見せて悪かった。もっとスマートに解決するつもりだったんだけど」

 まだ目の前で起った事実が飲み込めず、ゆっくりうなずくことしかできない。そんなわたしの頬に彼は手をそえる。

 彼の温かさが伝わってきて、わたしは彼を実感できた。

 わたしの顔を見つめていた尊さんが、何かを思い出したのかまだ床に座り込んでいる翔太に鋭利なまなざしを向けた。

「それとまだ知らないようなので、教えておく」

「なんの話だ?」

 尊さんはより一層するどい目で、翔太を上から見下した。

 その態度に翔太が眉をひそめる。

「今回の婚約破棄の件だが、三島院長は美穂さんがあなたに夢中なうちは何を言っても無駄だと思ったそうだ。だから時間をおくついでに、あなたを身辺調査をするために泳がせた。すると色々と良くない話が出てきた、そういうことだ」

 尊さんがスーツの合わせから、写真を数枚とりだした。そしてそれを翔太に手渡す。

 そこにはラブホテルらしい建物から女性とでてくる翔太の姿が写っていた。

 翔太の顔がますます青ざめていく。次第に色を亡くした唇が震えだした。

「お前が……これを?」

 さっきまでの勢いは失せて、声は弱々しい。
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