偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「おじさん、たい焼きひとつちょうだい」
病院と駅の間にある遊歩道に、時折ある屋台のたい焼き屋を見つけて足を止めた。
いつも足早に前を通りすぎるだけだったのだけれど、今日は開放感からかいい匂いにつられてしまった。
病院を辞めたから、ここももうあんまり通らないかもしれないしね。
「はいよ。おまけで一個つけといた。なにかのお祝いだろう?」
人の良さそうな店主が、手に持っている花束を指さす。
「あぁ……これね。……そうなんです。お祝い!」
本当はお別れの花束だが、せっかく気のいい店主の心遣いを無にするのは気が引ける。
「そうだと思ったよ」
ニコニコと笑う店主に「ありがとうございます」と声をかけ、たい焼きを受け取るとあったかいうちに食べようと少し離れたところにあるベンチに腰掛けた。
紙袋に包まれた、たい焼きからほくほくとした温かさが伝わってくる。
日の落ちかけて昼間よりも冷えたベンチで、大きな口をあけて頭からガブリとそれを頬張った。
「ん、おいしい! こんなにおいしいなら、もっと食べておくんだった」
パリッとした皮に、ほどよい甘さの餡子。ほっとする甘さに心が癒やされる。
パクパクと食べ進めているうちに、これまでの怒濤の一ヶ月が走馬灯のように頭を駆け巡った。
病院と駅の間にある遊歩道に、時折ある屋台のたい焼き屋を見つけて足を止めた。
いつも足早に前を通りすぎるだけだったのだけれど、今日は開放感からかいい匂いにつられてしまった。
病院を辞めたから、ここももうあんまり通らないかもしれないしね。
「はいよ。おまけで一個つけといた。なにかのお祝いだろう?」
人の良さそうな店主が、手に持っている花束を指さす。
「あぁ……これね。……そうなんです。お祝い!」
本当はお別れの花束だが、せっかく気のいい店主の心遣いを無にするのは気が引ける。
「そうだと思ったよ」
ニコニコと笑う店主に「ありがとうございます」と声をかけ、たい焼きを受け取るとあったかいうちに食べようと少し離れたところにあるベンチに腰掛けた。
紙袋に包まれた、たい焼きからほくほくとした温かさが伝わってくる。
日の落ちかけて昼間よりも冷えたベンチで、大きな口をあけて頭からガブリとそれを頬張った。
「ん、おいしい! こんなにおいしいなら、もっと食べておくんだった」
パリッとした皮に、ほどよい甘さの餡子。ほっとする甘さに心が癒やされる。
パクパクと食べ進めているうちに、これまでの怒濤の一ヶ月が走馬灯のように頭を駆け巡った。