偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「三島先生には大変お世話になっているので、相談に乗ったまでのこと。しかしあなたがいくら横やりを入れたとしても、三島紀念病院と我が社との付き合いに影響があるとは思えないけどな」
「俺は……俺は……」
顔面蒼白の翔太は膝をついて写真を震える手で握りしめていた。
「こっちは、お前のような小者のおどしでどうにかなるような、中途半端な仕事なんてしてないんだよ」
尊さんの言葉が終わると同時に、スマートフォンの着信音が響いた。はじかれたように翔太が通話ボタンを押す。
「はい……いや、それは! 違うんだ、話を聞いてくれ」
哀れなほど取り乱した様子で、スマートフォンを握りしめ必死に訴えかけながら出口に向かっていく。
その背中に尊さんが追い打ちをかけるように言葉を投げかける。
「それと弊社の代わりに使おうとしていた製薬会社との癒着も、病院の知るところになっているはずだ、転職先も早急に探すことをおすすめする。いや、弁護士の方が先かな?」
翔太はそれを聞くなり、ピタッと足とを止めた。そして振り返った青い顔で尊さんとわたしを睨んだ。
それがなんだか痛々しく見えて、わたしは直視することができなかった。