偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
彼の腕が緩む。ふたりの間にわずかな距離。
彼がわたしを愛おし気に見つめる。
それに応えるようにわたしはゆっくり目をつむった。
熱くて柔らかなものが唇に触れ、すぐに離れる。甘い感覚が体を満たしていく。
目を開け、お互いの気持ちをもう一度確かめるように視線を絡めた。それもキスが与えてくれたときめきと同じくらいわたしを幸せにする。
こうやって彼の腕にもう一度飛び込めたことが、この上ない喜びとなってわたしの中を駆け巡った。
彼の顔がゆっくりと傾く。もう一度……そう彼が言ったような気がして、わたしはそのままゆっくりと目を閉じた。
さっきよりも強く押し付けられた唇。角度を変え、どんどん深くなっていく。
わたしたちはお互いの言葉にできないほどの深い気持ちを伝えあうように、必死になって唇を交わしていた。
彼の背中にぎゅっと手を回す。スーツが皺になってしまっているかもしれない。それでもやはり、彼のすべてをこの腕の中で感じたくてやめられない。
息継ぎするのも許されないほどのキス、それを一身に受け止め、陶酔していた。
「尊さん……っ……もう」
「ダメ、もう少しだけ。いいだろう?」
唇を触れ合わせながら、そんなやりとりを数回した……そのとき。