偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

 彼が触れたところが、熱をもっていく。一気に体温があがると同時に、胸の高鳴りも痛いほど強くなる。

「きりがないな……」

 尊さんが小さく耳元で呟いた。それと同時にわたしを抱き上げる。

「きゃあ!」

 履いていたパンプスが玄関に転げ落ちた。

 尊さんは構うことなく、ずんずん部屋の奥へ向かう。

 階段を上り、寝室に向かっているのがわかり、胸がトクトクとまた違った音をたてた。

 それは間違いなく期待の現れで……。

 前を向く尊さんの顔をじっと見つめていたら、ふと彼がこちらを見てしまった。

「そんな目で見られると、抑えがきかなくなる。覚悟はできているんだろうね?」

 どんな目をしていたというのだろうか。わたしの期待がもろに出ていたとしたら、それはそれで恥ずかしい。

「なにを……するつもりですか?」

 ちょっとした好奇心が抑えられず聞いてみた。

「それは、これからのお楽しみということで……」

 愛しい彼の不敵な笑み。そんな顔でさえかっこいいと思ってしまう。

 不意に彼がわたしの首筋にキスを落とした。そこにあるのは彼からもらったネックレス。

「これ、持っていてくれたんだね」

 諦め悪いと言われても、これだけは外すことができなかった。彼へのわたしの思いがそうさせていた。

 わたしがうなずくと、彼は本当にうれしそうに笑った。

 彼が開いた寝室の扉。バタンとしまったその先で、わたしたちはふたりの新しい関係が始まった。
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