偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
「そうでしたね。病院を退職されたばかりとか……」
「はい。就職活動中です。心機一転、住むところも新しく探しています」
元カレのところを追い出されたといえなかった。
どうしてだか、川久保さんには過去の悲惨な恋愛の話を聞かせたくなかったからだ。
「そうでしたか」
川久保さんは手にしていたコーヒーカップをソーサーに戻すと、じっとわたしを見つめてきた。
今までの柔らかい表情ではなく少し思いつめたような雰囲気が醸し出されていて、わたしはとたんに胸がざわついた。
そしてゆっくりと口を開いた彼から発せられた言葉に、わたしはただただ驚くしかなかった。
「小沢さん。いや、那夕子さん。僕と結婚しませんか?」