偽装夫婦～御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない～

「いや、だから俺たちの関係はこのままだろう？」

「それって、わたしと……不倫関係になるつもりなの？」

「え？　いや、不倫とは違うだろう。元々付き合っていたのは俺たちなんだから」

　それっていったいどこが違うの？

　悪びれもない態度に、わたしは苛立ちを押さえることが出来ずに爆発させた。

「結婚している男性とお付き合いをすることが、不倫以外のなにになるの!？」

「那夕子？　……どうしたんだよ」

　それまで言葉少なく話を聞いていたわたしが、急に声を荒げたせいか翔太は目を皿のようにして驚いた。

「どうしたって……わからないの？　翔太はわたしに不倫をさせようとしているんだよ？」

「仕方ないだろう。俺と美穂さんの結婚が決まったんだから」

　わたしの態度が不満だったのか、吐き捨てるように言う。

「だったら……わたしのことが好きな気持ちが少しでも残っているなら、きっぱり別れてくれるのが、優しさじゃないの？」

　そうだろう。申し訳ない気持ちがあるなら、わたしの未来を自由にしてほしい。

　これから先、ずっと先のない関係を続けていくことなんてわたしにはできない。