偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
夫婦たるもの
【夫婦たるもの】
「けけ、結婚記念日って!?」
思わず前のめりになったわたしだったけれど、目の前の川久保さんは優雅にワインを飲んでいた。
「あ、おいしい。よかった。大切な日にとっておきのワインがあって。せめてこれくらいしないとさみしいよね」
目を白黒させているわたしなどお構いなしに、ワインの感想を述べている。
「いや、ちょっと無視しないでください」
「ん? 君も飲んで、那夕子」
にっこりと笑顔を浮かべた彼に、わたしは声をひっくり返した。
「な、那夕子!?」
突然、名前を呼び捨てにされて思わず声を上げる。さっきからいちいち驚かされるような発言ばかりだ。それにいつの間にか、それまで敬語を使っていたのに、ずいぶん砕けた話し方になっている。
「そう、夫婦なんだからあたまりえじゃないか」
「そうは言っても、川久保さ――」
話をしているわたしの唇に、彼の人差し指が優しく添えられる。
いきなりのことに驚いて目を見開いたわたしに、彼はにっこりと微笑んだ。
それは面白がっているような、いたずらめいているような、そんな表情で。大人な彼の意外な雰囲気に気がついて、胸がドクンと大きく鳴った。
「尊だ。君の夫の名は、川久保尊。ほら、呼んでみて」
優しく小さな子に教えるような言い方。
そのせいかなぜだか素直に彼の言葉をきいてしまう。
「けけ、結婚記念日って!?」
思わず前のめりになったわたしだったけれど、目の前の川久保さんは優雅にワインを飲んでいた。
「あ、おいしい。よかった。大切な日にとっておきのワインがあって。せめてこれくらいしないとさみしいよね」
目を白黒させているわたしなどお構いなしに、ワインの感想を述べている。
「いや、ちょっと無視しないでください」
「ん? 君も飲んで、那夕子」
にっこりと笑顔を浮かべた彼に、わたしは声をひっくり返した。
「な、那夕子!?」
突然、名前を呼び捨てにされて思わず声を上げる。さっきからいちいち驚かされるような発言ばかりだ。それにいつの間にか、それまで敬語を使っていたのに、ずいぶん砕けた話し方になっている。
「そう、夫婦なんだからあたまりえじゃないか」
「そうは言っても、川久保さ――」
話をしているわたしの唇に、彼の人差し指が優しく添えられる。
いきなりのことに驚いて目を見開いたわたしに、彼はにっこりと微笑んだ。
それは面白がっているような、いたずらめいているような、そんな表情で。大人な彼の意外な雰囲気に気がついて、胸がドクンと大きく鳴った。
「尊だ。君の夫の名は、川久保尊。ほら、呼んでみて」
優しく小さな子に教えるような言い方。
そのせいかなぜだか素直に彼の言葉をきいてしまう。