偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~


「ほら、あーん」

 なぜだかうれしそうに、わたしにチーズを食べさせようとしている。

「自分でできますから」

「ダメ、また落としたら困るだろう? ほら、ほら」

 ぐいぐい押しつけられて、観念したわたしは口を開いた。

「おいしい?」

 きっと高いチーズに違いない。すごく美味しい……はずなのだけれど、それよりも食べさせてもらったことが恥ずかしくて、熱くなった頬を両手で隠した。

「なにそれ。すごくかわいい」

「かわいいなんてやめてください。もう……あっつい」

 手でパタパタ頬を扇いで、早く赤い顔をなんとかしたい。

「僕は正直な人間なんで、かわいいものを見たらかわいいと言いたい。だからこれは那夕子が慣れるしかないね」

「慣れる……なんて日がくるんでしょうか?」

 思わず唇を尖らせたわたしを見て、尊さんは声を出して笑った。

「慣れてもらわないと困るな。だって君がかわいいのが悪いんだから」

「わ、わたしが悪いんですか?」

 声を上げたわたしを見て、尊さんは口に拳を当ててくくっと笑っていた。
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