偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~

 わたしはいったい、いつベッドに入ったのだろうかと。そしてこれは、誰のベッドなのかと。

 そこで眠ってしまう前のことをおぼろげながら思い出し、完全に覚醒した。ぱちっと目を開けて、布団をめくって自分の状態を確認する。

よかった、ちゃんと服は着てる。

昨日着ていた服をそのまま身につけていた。ほっと安心したのもつかの間、背後から自分の腰に回されている手に気がついて身体が固まる。

もしかして……いや、もしかしなくても。おそるおそる……相手に気づかれないようにして首だけ後ろに向けた。すると目の前にある、にっこりと笑う男性の顔を見て叫びそうになって、すんでのところで慌てて口を閉じた。

「おはよう。よく眠れましたか?」

 寝起きのせいかすこし気だるげな笑顔。そこにいるのは間違いなく、尊さんだった。わたしとは違い、二日酔いなどしていないのだろう。

 思わず見とれてしまいそうになっていることに気がついて、慌ててわたしは壁の方を向いた。

『かっこいい』なんて思っている場合じゃない。大事なことがあるだろうと、自分に突っ込んだ。
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