偽装夫婦~御曹司のかりそめ妻への独占欲が止まらない~
心底うんざりしてしまったわたしは、思い切り翔太をにらみつけた。
「じゃあ、都合のいい女だ。でも、わたしは自分の人生が大事だから、もうあなたとはつき合えない。誰にも都合良く使われたくないの。わたしの人生はわたしのものだから」
はっきりと言い切ったわたしを見て、翔太は顔色を変えた。そして怒りの滲んだ顔で吐き捨てる。
「わかった。勝手にしろ。でも絶対後悔することになるからな」
そういうと威嚇するように大きな音を立ててドアを閉め、寝室を出て行った。
わたしはただ黙々と荷造りをする。
彼と付き合った二年間がこんな形で幕を下ろすなんて思ってもみなかった。
それなりに楽しい時間もあった。けれどどこかズレを感じていたことも確かで、その小さなほころびがどんどん大きくなって、今回決定的にわたしたちの間に亀裂が入ったのだ。
そもそもつき合っている人がいるのに別の人と結婚する男と別れられることに感謝したいくらいだ。
今までの良い思い出さえもすべて壊してしまうほどの破壊力のあった別れ話。
むしろきっぱりと彼への思いを断ち切れると思えば、よかったのかもしれない。
わたしはボストンバッグに荷物をぎゅうぎゅうに詰めながら、そんなことを考えていた。
しかし本当の地獄はその日の数日後から始まった。