冷やし中華が始まる頃には
「うわ、笹崎さんナンパしてるー!」
斜め向かいに座っていた矢幡さんが大声で言うと、2人に急に視線が集まった。
「矢幡さん、そういうのデリカシーないよ。見ないふり、見ないふり。」
美人な新井さんが笑って言う。
「そっかあ〜、ごめんねえ。門野さん、迷惑だったらもう席変えて大丈夫だからね!」
矢幡さんの言葉にならはハッとして、やっと笑顔を作った。
「そうですね、ちょっとトイレ行ってきます!」
ならは、「すみません」と小さく手を合わせてトイレへと向かった。
笹崎、本気なのかなあ。
心臓がバクバクしているのが自分でも分かる。
さっきの目はちょっと真剣過ぎて、なら自身どう返すのが正解なのか判断に困ってたところだったから、矢幡さんの声が入って良かった。
正直どういう顔して戻ったらいいのだろうか。
笹崎と離れて座るのも不自然な気もするし。
モヤモヤとした気持ちのままトイレから出ると、笹崎が立っていた。
「トイレの出待ち?やだあ〜」
冗談っぽく言いながら過ぎ去ろうとすると、グイと腕を掴まれた。
「突然だけど、明日一緒に花火大会行かない?」
「え」
ならは世間が明日の花火大会で盛り上がっていることに気付いた。
「2人で?」
「うん。」
「まあ、いいけど。」
「じゃ連絡先教えて。」
「今ここにスマホないから、あとで。」
ならはそういうと顔が熱くなるのを感じ、思わず目をそらしてみんなの元へと戻る。
笹崎がトイレに入っていったのを背中で感じた。
このままみんなの元に戻って大丈夫だろうか、顔は赤くないだろうか。
心臓が周りにバレそうなほど鳴っているのが分かる。
席に戻ると、既に笹崎とならが座っていた席は他のメンバーで埋まっていた。
裾に座っていた矢幡さんが声をかける。
「門野さん、門野さん」
矢幡さんの隣に小さくスペースが空いている。
「ありがとうございます」と一言言ってそこに座らせてもらう。
「笹崎さん、何だって?さっき。」
矢幡さんはストレートだ。
「え、さっき?さっきって。」
「ほら、私が邪魔したときの。」
「ああ、なんだっけ」
ならは、トイレ前で花火に誘われたことで頭がいっぱいになっていた。
「そうだ、彼氏いるのって。全然、全然そういうアレじゃなく、普通の会話ですよ。本当に。」
「あやしい〜」
矢幡さんが笑いながら続けた。
「私がここで働き始めた時にはもう笹崎さんいたの。初めて見たとき『うわー、めっちゃかっこいー』って思ってさ、ずっと狙ってたんだよね〜。」
意外な告白だった。
「でも全然私のことそういう風に見てもらえたことないし、門野さんへの話し方とか全然違うもん。」
矛先が自分に向いてドキッとする。
「ああ、こういう子がタイプなんだーってすぐ分かっちゃった。笹崎さん、門野さんのこと好きなんだと思う。」
ならはどんな顔して話を聞いたらいいのか困る。
そこにちょうど笹崎がトイレから戻ってくる。
矢幡さんはすぐに表情を切り替えた。
ならにも緊張が走る。
「笹崎さん、あっち空いてる。」
矢幡さんは小声で反対側に空いていたスペースを指差す。
「おーありがとー」
笹崎もそう応えると自然とそちらへ向かった。
「私、門野さんと笹崎さん、すごく似合ってると思うよ。あんな感じだからすごく軽い人に感じてるかもしれないけど、私から見て、笹崎さんはかなり本気だと思う。」
「そう、なんですね。」
「それに安心して。私もうとっくに諦めてるし、今たまたまいないけどそのあと彼氏いたことあったし!」
矢幡さんはアハッと笑いながら話を終わらせた。
しかしならは、明日の花火大会のことを考えるとモヤモヤが消えなかった。
斜め向かいに座っていた矢幡さんが大声で言うと、2人に急に視線が集まった。
「矢幡さん、そういうのデリカシーないよ。見ないふり、見ないふり。」
美人な新井さんが笑って言う。
「そっかあ〜、ごめんねえ。門野さん、迷惑だったらもう席変えて大丈夫だからね!」
矢幡さんの言葉にならはハッとして、やっと笑顔を作った。
「そうですね、ちょっとトイレ行ってきます!」
ならは、「すみません」と小さく手を合わせてトイレへと向かった。
笹崎、本気なのかなあ。
心臓がバクバクしているのが自分でも分かる。
さっきの目はちょっと真剣過ぎて、なら自身どう返すのが正解なのか判断に困ってたところだったから、矢幡さんの声が入って良かった。
正直どういう顔して戻ったらいいのだろうか。
笹崎と離れて座るのも不自然な気もするし。
モヤモヤとした気持ちのままトイレから出ると、笹崎が立っていた。
「トイレの出待ち?やだあ〜」
冗談っぽく言いながら過ぎ去ろうとすると、グイと腕を掴まれた。
「突然だけど、明日一緒に花火大会行かない?」
「え」
ならは世間が明日の花火大会で盛り上がっていることに気付いた。
「2人で?」
「うん。」
「まあ、いいけど。」
「じゃ連絡先教えて。」
「今ここにスマホないから、あとで。」
ならはそういうと顔が熱くなるのを感じ、思わず目をそらしてみんなの元へと戻る。
笹崎がトイレに入っていったのを背中で感じた。
このままみんなの元に戻って大丈夫だろうか、顔は赤くないだろうか。
心臓が周りにバレそうなほど鳴っているのが分かる。
席に戻ると、既に笹崎とならが座っていた席は他のメンバーで埋まっていた。
裾に座っていた矢幡さんが声をかける。
「門野さん、門野さん」
矢幡さんの隣に小さくスペースが空いている。
「ありがとうございます」と一言言ってそこに座らせてもらう。
「笹崎さん、何だって?さっき。」
矢幡さんはストレートだ。
「え、さっき?さっきって。」
「ほら、私が邪魔したときの。」
「ああ、なんだっけ」
ならは、トイレ前で花火に誘われたことで頭がいっぱいになっていた。
「そうだ、彼氏いるのって。全然、全然そういうアレじゃなく、普通の会話ですよ。本当に。」
「あやしい〜」
矢幡さんが笑いながら続けた。
「私がここで働き始めた時にはもう笹崎さんいたの。初めて見たとき『うわー、めっちゃかっこいー』って思ってさ、ずっと狙ってたんだよね〜。」
意外な告白だった。
「でも全然私のことそういう風に見てもらえたことないし、門野さんへの話し方とか全然違うもん。」
矛先が自分に向いてドキッとする。
「ああ、こういう子がタイプなんだーってすぐ分かっちゃった。笹崎さん、門野さんのこと好きなんだと思う。」
ならはどんな顔して話を聞いたらいいのか困る。
そこにちょうど笹崎がトイレから戻ってくる。
矢幡さんはすぐに表情を切り替えた。
ならにも緊張が走る。
「笹崎さん、あっち空いてる。」
矢幡さんは小声で反対側に空いていたスペースを指差す。
「おーありがとー」
笹崎もそう応えると自然とそちらへ向かった。
「私、門野さんと笹崎さん、すごく似合ってると思うよ。あんな感じだからすごく軽い人に感じてるかもしれないけど、私から見て、笹崎さんはかなり本気だと思う。」
「そう、なんですね。」
「それに安心して。私もうとっくに諦めてるし、今たまたまいないけどそのあと彼氏いたことあったし!」
矢幡さんはアハッと笑いながら話を終わらせた。
しかしならは、明日の花火大会のことを考えるとモヤモヤが消えなかった。