冷やし中華が始まる頃には
はなのたねの主任の新井さんが月間報告を一通りし終えた後、付け加えるように言った。
「今月から笹崎さんが戻ってきてくれて、峯岸くんの自傷行為やパニックで暴れ回る行為が減りましたね。」
峯岸くんって、たしか矢幡さんが対応できないと言っていた男の子だ。
菅原さんが付け足す。
「結構顕著に出て俺もビックリだよ。どう?笹崎くんは以前との違い感じた?」
笹崎がビクッとしたような表情をしたが、落ち着いて答えた。
「むしろ最初峯岸くんの表情が僕の知ってる峯岸くんと全然違っててビックリしたんですけど、たぶん家庭的な問題が関係してるのかなあと。家庭的というか・・・ここで話していいんですかね・・・?」
笹崎が頼るような目で菅原さんに視線を送る。
菅原さんがみんなに説明するように姿勢を直して口を開いた。
「あとで説明するつもりだったんですけど、せっかくなんで今ちょっとお話しさせて下さい。峯岸くんの家庭なんですけど、えー、3年前に親御さんが離婚されて、峯岸くんはお母さんに、お母さんのご実家の方に引き取られています。それでご実家が結構伝統的な窯元さんでして、おじいさんが今やっているんですけど、峯岸くんと峯岸くんのお兄さんとで来年の春から後継として働く話が出てるんですね。
峯岸くん小さな頃から陶芸が大好きで、実際個展もするようなすごい腕前なんですよ。」
新井さんが頷きながら補足する。
「最近SNSなどでも上げられるくらい、密かに話題になってますね。」
へー、聞いたことなかった、とならは素直に感心する。
「それでお兄さんの話によると、おじいさんが、峯岸くんにも伝統的な作り方を厳しく教えるようになったらしいんです。
皆さん分かる通り、峯岸くんはこだわりもすごく強いから、そのせいで最近は落ち着きがなかったのかな、って話してたんですね。」
そこで笹崎が口を挟む。
「僕、お兄さんからその話を先週初めて伺ったんですけど、今後はなるべく峯岸くんが自由に製作できるように、おじいさんを説得してるとのことでした。」
菅原さんが頷く。
「まあ、あとはやっぱり笹崎くん効果かね。彼、笹崎くんのこと大好きだから、今では多少何かあっても笹崎くんが隣に座ると落ち着くのもあるね。」
笹崎は謙虚に「いやいや」と首を振ったが、新井さんも大きく頷いた。
笹崎ってアルバイトなのにそんなに頼りになるんだ。
普段働いてる間はほとんど顔を合わせないので、ならは初めて知ることだった。
「あ、すっかり話題が逸れてしまったんですが、そうそう、それでね・・・」
菅原さんが話を切り出す。
「この9月から、お兄さんに講師をお願いして、週に1回水曜午後に陶芸教室をはなのたねとひだまりと合同でやろうって話になりました。まだ試験的な段階で、様子を見て来年からカリキュラムとして本格的に取り入れていくかどうか、っていうところなんですが。」
新井さんが続ける。
「ひだまりだと作品をバザーに出品することもできますからね。」
みんなが無言で頷く。
ちらほらと質問は出たものの、方向としてはみんな賛成という形で話がまとまった。
ならは単純に楽しそう、と思っただけだった。
「今月から笹崎さんが戻ってきてくれて、峯岸くんの自傷行為やパニックで暴れ回る行為が減りましたね。」
峯岸くんって、たしか矢幡さんが対応できないと言っていた男の子だ。
菅原さんが付け足す。
「結構顕著に出て俺もビックリだよ。どう?笹崎くんは以前との違い感じた?」
笹崎がビクッとしたような表情をしたが、落ち着いて答えた。
「むしろ最初峯岸くんの表情が僕の知ってる峯岸くんと全然違っててビックリしたんですけど、たぶん家庭的な問題が関係してるのかなあと。家庭的というか・・・ここで話していいんですかね・・・?」
笹崎が頼るような目で菅原さんに視線を送る。
菅原さんがみんなに説明するように姿勢を直して口を開いた。
「あとで説明するつもりだったんですけど、せっかくなんで今ちょっとお話しさせて下さい。峯岸くんの家庭なんですけど、えー、3年前に親御さんが離婚されて、峯岸くんはお母さんに、お母さんのご実家の方に引き取られています。それでご実家が結構伝統的な窯元さんでして、おじいさんが今やっているんですけど、峯岸くんと峯岸くんのお兄さんとで来年の春から後継として働く話が出てるんですね。
峯岸くん小さな頃から陶芸が大好きで、実際個展もするようなすごい腕前なんですよ。」
新井さんが頷きながら補足する。
「最近SNSなどでも上げられるくらい、密かに話題になってますね。」
へー、聞いたことなかった、とならは素直に感心する。
「それでお兄さんの話によると、おじいさんが、峯岸くんにも伝統的な作り方を厳しく教えるようになったらしいんです。
皆さん分かる通り、峯岸くんはこだわりもすごく強いから、そのせいで最近は落ち着きがなかったのかな、って話してたんですね。」
そこで笹崎が口を挟む。
「僕、お兄さんからその話を先週初めて伺ったんですけど、今後はなるべく峯岸くんが自由に製作できるように、おじいさんを説得してるとのことでした。」
菅原さんが頷く。
「まあ、あとはやっぱり笹崎くん効果かね。彼、笹崎くんのこと大好きだから、今では多少何かあっても笹崎くんが隣に座ると落ち着くのもあるね。」
笹崎は謙虚に「いやいや」と首を振ったが、新井さんも大きく頷いた。
笹崎ってアルバイトなのにそんなに頼りになるんだ。
普段働いてる間はほとんど顔を合わせないので、ならは初めて知ることだった。
「あ、すっかり話題が逸れてしまったんですが、そうそう、それでね・・・」
菅原さんが話を切り出す。
「この9月から、お兄さんに講師をお願いして、週に1回水曜午後に陶芸教室をはなのたねとひだまりと合同でやろうって話になりました。まだ試験的な段階で、様子を見て来年からカリキュラムとして本格的に取り入れていくかどうか、っていうところなんですが。」
新井さんが続ける。
「ひだまりだと作品をバザーに出品することもできますからね。」
みんなが無言で頷く。
ちらほらと質問は出たものの、方向としてはみんな賛成という形で話がまとまった。
ならは単純に楽しそう、と思っただけだった。