冷やし中華が始まる頃には
ドキドキしながら向かうと、案外すぐにブースは見えてきた。
コーヒーとコーヒー豆を販売しているブースの隣奥にあった。
「いらっしゃいませ」
峯岸がそう言って顔を上げると、ならだと気付く。
「あ、門野さん。」
「ど、どうも。菅原さんから話を聞いて。」
「あーあのおっさん優しい。どうぞどうぞ適当に見てって下さい。」
峯岸は笑顔でそう答える。
ブースは、おそらく弟の猛が作ったらしいインパクトのある生き物のオブジェと、峯岸が作ったらしいシンプルな食器が品良く並んでいた。
「あ、猛の作品見に来ました?」
ならの視線を追ったのか、峯岸が聞く。
「いや、でも全然違うんでおそらくこっちのオブジェが猛くんのかな、と。」
「はい、そうですそうです。こっち側が猛のです。」
「うわあー、すごい。」
細かいところまで表現されたオブジェに思わず声が漏れる。
SNSで話題になるわけだ。
そしてふと兄である峯岸の作品にも視線が流れる。
「かわいい。」
コロンとしたフォルムのカフェオレボウルやマグカップ、上品なサイズのお茶碗などに惹き寄せられる。
「こっちは俺が作ったやつです。」
「すごいかわいいです。欲しいなー。」
ならは無意識に言葉を漏らす。
「どれですか。」
「これも、これも、すごくかわいい。あー、このマグカップいいなー。色もすごく好きです。」
ならがそう言うと、峯岸はそのマグカップを手に取った。
「じゃあこれサービスであげます。」
「え?買います買います。」
「いいですよ、あげます、あげます。」
峯岸は慣れた手つきで梱包し始める。
「来月からの陶芸、みんな興味持ってくれるかなー。」
峯岸がそう呟く。
「私、すごいありますよ。」
ならがそう言うと、峯岸はブハッと吹き出した。
「利用者さん達の話ですよ。いや、でも、そう言っていただけて嬉しい。えー、じゃあうちの工房に習いに来て下さいよー。」
峯岸はそう言ってマグカップが入った袋を差し出す。
「え、いいんですか?」
ならが真面目な表情で聞き返した。
「え、来てくれるんですか?」
峯岸も聞き返す。
「工房行っていいんですか?」
「全然いいっすよ。一応いつでも工房体験やってますし、地味に教室も開講してるんで。おばさま方ばかりですけど。」
「行きます。行きたいです。」
「ええ、ぜひ。あ、そうそう、これ、うちの名刺です。本当に通いたくなったらで全然構わないんで、ここのメールアドレスに連絡下さい。まあ、俺に直接でもいいですけど。」
峯岸はならにシンプルなデザインの名刺を差し出した。
綺麗な手。
ついならは見惚れる。
「あ、笹崎さん。」
峯岸が声を発した。
ならがドキッとして振り返ると、笹崎がそこに立っていた。
コーヒーとコーヒー豆を販売しているブースの隣奥にあった。
「いらっしゃいませ」
峯岸がそう言って顔を上げると、ならだと気付く。
「あ、門野さん。」
「ど、どうも。菅原さんから話を聞いて。」
「あーあのおっさん優しい。どうぞどうぞ適当に見てって下さい。」
峯岸は笑顔でそう答える。
ブースは、おそらく弟の猛が作ったらしいインパクトのある生き物のオブジェと、峯岸が作ったらしいシンプルな食器が品良く並んでいた。
「あ、猛の作品見に来ました?」
ならの視線を追ったのか、峯岸が聞く。
「いや、でも全然違うんでおそらくこっちのオブジェが猛くんのかな、と。」
「はい、そうですそうです。こっち側が猛のです。」
「うわあー、すごい。」
細かいところまで表現されたオブジェに思わず声が漏れる。
SNSで話題になるわけだ。
そしてふと兄である峯岸の作品にも視線が流れる。
「かわいい。」
コロンとしたフォルムのカフェオレボウルやマグカップ、上品なサイズのお茶碗などに惹き寄せられる。
「こっちは俺が作ったやつです。」
「すごいかわいいです。欲しいなー。」
ならは無意識に言葉を漏らす。
「どれですか。」
「これも、これも、すごくかわいい。あー、このマグカップいいなー。色もすごく好きです。」
ならがそう言うと、峯岸はそのマグカップを手に取った。
「じゃあこれサービスであげます。」
「え?買います買います。」
「いいですよ、あげます、あげます。」
峯岸は慣れた手つきで梱包し始める。
「来月からの陶芸、みんな興味持ってくれるかなー。」
峯岸がそう呟く。
「私、すごいありますよ。」
ならがそう言うと、峯岸はブハッと吹き出した。
「利用者さん達の話ですよ。いや、でも、そう言っていただけて嬉しい。えー、じゃあうちの工房に習いに来て下さいよー。」
峯岸はそう言ってマグカップが入った袋を差し出す。
「え、いいんですか?」
ならが真面目な表情で聞き返した。
「え、来てくれるんですか?」
峯岸も聞き返す。
「工房行っていいんですか?」
「全然いいっすよ。一応いつでも工房体験やってますし、地味に教室も開講してるんで。おばさま方ばかりですけど。」
「行きます。行きたいです。」
「ええ、ぜひ。あ、そうそう、これ、うちの名刺です。本当に通いたくなったらで全然構わないんで、ここのメールアドレスに連絡下さい。まあ、俺に直接でもいいですけど。」
峯岸はならにシンプルなデザインの名刺を差し出した。
綺麗な手。
ついならは見惚れる。
「あ、笹崎さん。」
峯岸が声を発した。
ならがドキッとして振り返ると、笹崎がそこに立っていた。