冷やし中華が始まる頃には
「え?」
「やめてよ、そろそろ。」

ならはずっと「雷様」と心の中で呼んでいた。

「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「んー、やまと、やまとくん、やまちゃん・・・。あ、俺、下の名前『やまと』なんだよね。」
「じゃあ、『やまと』。」

ならがそう言うと、峯岸は照れ臭そうに「おお。」と答える。

「やまと。」
「うん。」
「やまと。」
「もういいわ。照れるからやめて。」

峯岸は顔をテーブルに伏せる。

ならはそんな峯岸がかわいくて、顔を峯岸に近づけて、わざと可愛らしく言ってみる。

「やーまと。」

峯岸は少し顔を上げてならを見た。

「ドキッとすんじゃん、やめてよ。」

峯岸にまっすぐに見つめられ、ならはドキッとする。
思わず顔を離して姿勢を正す。

峯岸もむっくりと起き上がって、ならを見る。

「なら」

ドキッ。
ならは目をそらす。

「お前は今日から『なら』だ。」
「え?」
「お前の名前は『なら』だ。」

なにそれ。

思わずならは笑う。
つられて峯岸も笑う。

「なんだこれ、しょーもな。」
「しょーもない、ほんと。」

2人はケラケラ笑いあった。
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