冷やし中華が始まる頃には
峯岸は静かに話を始めた。

「毎日毎日、猛と母ちゃんの間に立って、お互いの話を聞いて、たまに母ちゃんの体調が悪い時は代わりに施設に迎えに行って、じいちゃんから金谷焼のこと教わって、ばあちゃんをデイサービスに連れてって・・・」

峯岸はそこで言葉に詰まる。
一度お茶を飲んだ後、独り言のようにこぼした。

「父ちゃんについてってたら今頃どうだったのかなー」

その一言は、夜の海へと吸い込まれていくようだった。

「これ本当に俺の人生なのかな・・・」

そう呟いた言葉が涙に濡れているように感じた。

ならは、思わず峯岸の頭に手を伸ばす。
そしてそのまま優しく峯岸の頭を抱きしめた。

峯岸は自分の身を預けて、ならの胸に顔をうずめる。

ならは愛おしいものを守るように、峯岸の頭を撫で続けた。

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