冷やし中華が始まる頃には
ならの予感が的中したのはそれから数日後だった。

仲のいい先輩や田口と夜ご飯食べてた最中だ。

突然スマホのバイブがポケットの中で鳴る。

峯岸だ。

ちょっと今は出られないよ。

ならはバイブが気になったのでスマホをカバンにしまう。

みんなでくだらない話をして、気持ちよく酔っ払って、峯岸の着信を思い出したのは店を出た時だった。

あ、そういえば・・・

急いでカバンにしまったスマホを取り出す。

峯岸からは着信の他にメールも来ていた。

ゆっくりとメールを開いた。

そこにはただ一言だけが綴られていた。
ならはその画面を見て、その場に立ち尽くす。

階段を降りてくる他の社員の存在に気付いて、ハッとする。

「あー今日は飲んだなー。」

誰かが気持ちよさそうに伸びをすると、他の数人もそれに続く。
田口は眠そうに電柱にもたれかかっている。

しかし、なら1人だけ酔いが覚めていくのが自分でも分かった。

「すみません、では、おつかれさまでした!」

ならはなるべくいつも通りのテンションを振る舞うと、その場をすぐ後にした。

みんなが「おつかれー」と言って手を振る。

ならは、人影のいないところまでくると、落ち着いて再びスマホを手に取る。

ゆっくりと峯岸の文面に目を落とす。

何度見ても同じだった。

「ならとのこと終わりにしたい。」

画面にはただ一言そう綴られていた。

そのあと、ならはどうやって自分の部屋まで戻ったのか覚えていない。
ただ、気が遠くなりながらも、なんとか歩いたことだけはぼんやりと覚えていた。

そのメール以降、峯岸とは連絡をとることは二度となくなった。
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