冷やし中華が始まる頃には
ならは気まずくなって思い切って口を開いた。

「日に焼けたね?」

突然の声に少し峯岸はビクッとしたが、落ち着いて「焼けちゃったね」と答えた。

「週末はワークショップとか出店ばかりしてるからね。」
「そんなに活動してるんだ?」

ならの問いかけに、峯岸は少し時間を置いて静かに話し始める。

「俺、今金谷焼の若手陶芸家でチーム組んでてさ、去年あたりから少しずつ仕事を紹介してもらえるようになってきて・・・。」

ならは「へえ」と感心する。

「最近やっと金谷焼を能動的に楽しめるようになったかも。」

峯岸は照れるような、それでも充実感を滲ませるような笑顔で言った。
峯岸の見たことのない笑顔に、ならの心がズキンと傷む。

「楽しそうだね?」
「うん、今は楽しいなー。」

峯岸の表情に、空白の3年間が重なって見える。

3年前の峯岸はそこにはもういなかった。

大和の人生に、私は要らなかったんだ。

ならは、峯岸に会いに来たことを後悔していた。

そうだ、未練を断ち切るために会いに来たんだ、私。

ならはどこかで期待していた自分を恥じる。

「なんか、もう、表情が全然違うからビックリした。」

絞り出すように、やっとの思いでならは声を出す。

「え?」
「もうすっかり自分の人生をまっすぐ歩いてるように見えるよ。」
「えっ、そう?」

峯岸は少し照れ笑いをする。

「でも、まあ、そうかもしれない。」

その表情はとても嬉しそうにならの目に映った。

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