冷やし中華が始まる頃には
飲み会のできごと
ひだまりでアルバイトを始めて1ヶ月が経過した頃だった。
朝礼で集められた作業室の中央に立っている男性を見て「あれ?」と思った。
「笹崎です。無事、いや無事じゃないかもしれないんですが、教員採用試験も終わりまして、今月からまたお世話になります。えー、3月までの期間とはなりますが、よろしくお願いします。」
笹崎ってこの人、知ってる。
同じ高校の目立つグループの中にいた彼を、ならは覚えていた。
朝礼が終わり、それぞれがバラけたタイミングを見計らってならは笹崎に近づく。
「笹崎さん、もしかしてなんですけど・・・」
「あれ?もしかして門野さん?門野さんだ!知ってる!三高でしょ?知ってる知ってる!うわー、なんで?職員?あれ、でも大学進学してるよね?バイト?」
ならが話し終えるのを待つこともなく、笹崎の口からみるみる言葉が溢れ出てきた。
「そう、バイトで1ヶ月前から。」
「なんだ、超最近じゃん。俺、3年前から。福祉大なんだけど、入学した直後からやってる、ここで。で、教採あったからしばらくお休みもらっててさ。って、いやまさかだよね!恥ずかしいわ。どっち?たね?ひだまり?」
「ひだまり。」
「そっちか。ざーんねん、俺、はなのたね。子ども好きでさ。教採も支援学校受けてて、そっちの道行きたくて、大学から少し離れてるけどここでバイトしてんだ。なに、なんでここ?」
「大学から近くて」
「もしかして和東学院?そこ?いや、珍しいよね。初めてだわ、みんな福祉関係のやつとかフリーターばっかりだったから。アハハハ。矢幡さん、知ってる?矢幡さん、元ニートのギャルだから。アハハハ、これ言ったこと本人に内緒ね!ってもう知ってた?」
ならは圧倒されるように笹崎の話を聞いていた。
不思議。
こんな人だったんだ。
そして高校で決して目立つタイプではなかった自分のことを知ってたんだ。
高校時代は全く接点もなかったから喋ったこともなく性格も知らず、一方的に存在を知っていただけだったが、こういう施設でバイトしてるなんて、と意外な一面を知る。
「あーごめん、そろそろ行くわ。お昼で!じゃ!」
笹崎は軽快に階段を登っていく。
ならはただ圧倒されるように、その後ろ姿を眺めていた。
ランチは基本的にひだまりの調理場兼食堂でみんなで食べることになっている。
座る席は自由だが、笹崎は利用者たちに挟まれていた。
「やっぱり笹崎さんは好かれてるねー」
矢幡さんが言う。
「人気者なんですね。」
「みんな好きだねー。このままここの職員になっちゃえばいいのに。給料低くて嫌だろうけど。ハハッ。」
「教採受けたみたいですね。」
「相当倍率高いらしいから、狭き門だよね。どうかなあ。頑張ってたけどねえ。」
利用者さんと笑いながら楽しそうに話す笹崎に目をやる。
「あ、そうだそうだ」と矢幡さんが小声になる。
「あのさ、飲み会とか誘って大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「よかった、若手だけで簡単な歓迎会っていうかまあ飲み会やろうよって職員の間でなっててさ、バイトの人たちもいつも誘ってたし、門野さんもぜひ。」
矢幡さんはそう言ってスマホを取り出す。
そういえば、まだ1ヶ月、職員の人たちと仕事以外の会話をそれほどしたことがなかった。
ならは少し心が弾んだ。
朝礼で集められた作業室の中央に立っている男性を見て「あれ?」と思った。
「笹崎です。無事、いや無事じゃないかもしれないんですが、教員採用試験も終わりまして、今月からまたお世話になります。えー、3月までの期間とはなりますが、よろしくお願いします。」
笹崎ってこの人、知ってる。
同じ高校の目立つグループの中にいた彼を、ならは覚えていた。
朝礼が終わり、それぞれがバラけたタイミングを見計らってならは笹崎に近づく。
「笹崎さん、もしかしてなんですけど・・・」
「あれ?もしかして門野さん?門野さんだ!知ってる!三高でしょ?知ってる知ってる!うわー、なんで?職員?あれ、でも大学進学してるよね?バイト?」
ならが話し終えるのを待つこともなく、笹崎の口からみるみる言葉が溢れ出てきた。
「そう、バイトで1ヶ月前から。」
「なんだ、超最近じゃん。俺、3年前から。福祉大なんだけど、入学した直後からやってる、ここで。で、教採あったからしばらくお休みもらっててさ。って、いやまさかだよね!恥ずかしいわ。どっち?たね?ひだまり?」
「ひだまり。」
「そっちか。ざーんねん、俺、はなのたね。子ども好きでさ。教採も支援学校受けてて、そっちの道行きたくて、大学から少し離れてるけどここでバイトしてんだ。なに、なんでここ?」
「大学から近くて」
「もしかして和東学院?そこ?いや、珍しいよね。初めてだわ、みんな福祉関係のやつとかフリーターばっかりだったから。アハハハ。矢幡さん、知ってる?矢幡さん、元ニートのギャルだから。アハハハ、これ言ったこと本人に内緒ね!ってもう知ってた?」
ならは圧倒されるように笹崎の話を聞いていた。
不思議。
こんな人だったんだ。
そして高校で決して目立つタイプではなかった自分のことを知ってたんだ。
高校時代は全く接点もなかったから喋ったこともなく性格も知らず、一方的に存在を知っていただけだったが、こういう施設でバイトしてるなんて、と意外な一面を知る。
「あーごめん、そろそろ行くわ。お昼で!じゃ!」
笹崎は軽快に階段を登っていく。
ならはただ圧倒されるように、その後ろ姿を眺めていた。
ランチは基本的にひだまりの調理場兼食堂でみんなで食べることになっている。
座る席は自由だが、笹崎は利用者たちに挟まれていた。
「やっぱり笹崎さんは好かれてるねー」
矢幡さんが言う。
「人気者なんですね。」
「みんな好きだねー。このままここの職員になっちゃえばいいのに。給料低くて嫌だろうけど。ハハッ。」
「教採受けたみたいですね。」
「相当倍率高いらしいから、狭き門だよね。どうかなあ。頑張ってたけどねえ。」
利用者さんと笑いながら楽しそうに話す笹崎に目をやる。
「あ、そうだそうだ」と矢幡さんが小声になる。
「あのさ、飲み会とか誘って大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「よかった、若手だけで簡単な歓迎会っていうかまあ飲み会やろうよって職員の間でなっててさ、バイトの人たちもいつも誘ってたし、門野さんもぜひ。」
矢幡さんはそう言ってスマホを取り出す。
そういえば、まだ1ヶ月、職員の人たちと仕事以外の会話をそれほどしたことがなかった。
ならは少し心が弾んだ。