神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~
「本当に、ペセルは毎回素敵なものを作りますね」
私の部屋に来て、お母様は編みかけのおくるみを見て言った。
私が編んでるおくるみは、お母様が私たち兄妹にもそれぞれに編んでくれたことのある図案だからだろう。
なんだか少し、懐かしそうに顔を綻ばせている。
「これを見たら、アマンダ王女はきっと喜ぶわよ。これは我が国伝統の安産と、産まれてくる子の健やかな成長と幸せを祈るものだもの」
この国で出産を控えると、大抵誰しもこの図案で図案でおくるみを編む。
それがパタル国の伝統だ。
しかし、アマンダ王女には唯一の欠点があった。
壊滅的に手芸関して不器用なのだ。
刺繍を刺せば、指を血だらけにするし、編み物はキュッキュと締まって棒が動かせなくなってしまうと言った具合に。
だから、お腹に子ができたと分かってきっと彼女は自分でもチャレンジしたに違いない。
しかし、こればっかりは頑張っても上手くいかなかったのだろう。
そうして、最後の最後で私にお願いしてきたのだ。
それが分かっているからこそ、私はおくるみにアマンダの気持ちまで入るように、せっせと編んでいく。
本来は数ヶ月掛けて楽しみながら編むものだが、今回は急ピッチである。
明日には王宮に届けねば、出立に間に合わないのだから。
「さ、みんな今日は頑張りましょうね」
お母様の声掛けに頷いて、私もマーラもせっせと手元を動かしていくのだった。
もちろん、お母様もしっかり手元は動いていたのだった。