神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~
「この、ファーストシューズはお母様から。こっちのカラフルなテディベアは、マーラからよ」
アマンダは、それはそれは嬉しそうで無事に渡せて私もホッとした。
出されたお茶に口をつけた時、入口から声がした。
「アマンダ、今日もここにペセルが来てるって聞いたんだが」
そう言って現れたのはサフル王子だった。
「ペセル!久しぶりだな。元気にしていたか?」
えぇ、君が来なければ元気でしたよ……。
内心のげっそり感は出さずに、私は微笑んで答えた。
こういうのは、社交で嫌ってほど身に着いている。
「えぇ、元気ですわ。先日は私の誕生日会にお越しくださり、ありがとうございました」
しっかりとお礼をして、私はにこやかに笑う。
サフル王子は、にこやかに笑って言った。
「あぁ、ペセル。聞いたんだね?」
その一言を聞いた時に、私は目の前の人物が私の前世の夫であることに気づいて、一気の顔色を変えることになった。
「どうして、あなたがここに居るの?」
きっと私はいつになく顔色が悪かったことだろう、だって私が逃げ出してきた相手が目の前に現れたのだから。
愛していたかもしれないけれど、憎くもなってしまった人。
私の前世の夫。
冥府の王、ハデスがサフル王子を依り代にして現れるなんて、想像もしていなかったのだから。
「ペルセポネ、私は君を愛しているからね。手放せるわけがないんだよ」
その声は、うっそりと耳から入ってきたのだった。