神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~
私の顔色の悪さから、アマンダが声を掛けてくる。
「ペセル、どうしたの? 具合でも悪い? 私が無理を頼んだからかしら……」
そう声を掛けて、顔色を曇らせるアマンダに私は明るくなるように、なんとか口角を上げて返事をした。
「アマンダ、たしかに少し頑張ってしまったからかしら。 渡せてホッとしたから疲れが出始めたみたい。また、明日の出立に顔を出すから、今日はお暇するわ」
私は、これ幸いと言葉を並べサッと席を立ち王宮を辞することにする。
「えぇ、明日が最後ですもの。あなたの顔を見たいから、ゆっくり休んでちょうだいね。公爵夫人にマーラにも良くお礼を言っておいてちょうだい」
「はい、承りました。王女殿下」
最後は少し、お互い周囲を気遣い別れの挨拶をした。
「ペセル、馬車までスコートしても?」
差し出された手は本来なら絶対に取りたくない、しかし立場上そんな訳にも行かない。
私はお腹に力を入れて、その手に手を乗せた。
「えぇ、構いませんわ。サフル殿下」
こうして、私は久しぶりに逃げ出したうちの一人と対峙することとなったが、現在は王宮で人目もあるからか、特に何かされることもなくすんなり公爵家の馬車へとエスコートされ、私はあの囁き以外には事件もなく公爵邸へと帰還した。
「今日はほんの挨拶ってとこかしら。まさか、今世の婚約者を依り代にしてくるとはね……。避けては通れないってことね」
私は、眠る前のひととき今日を振り返って呟いたのだった。