神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~
「いいの。私もいつかはそういう準備を楽しむ日が来ると思うから。母に任せることにしたわ」
う、ちょっと恥ずかしいけど……。
恥ずかしさから刺繍に視線を向けると、そんな私を見てクスッと笑ってサフル王子は言った。
「そうだね。きっとペセルもいずれは母になるもんね。きっと可愛くって、俺は送り出す時は泣いちゃうね」
想像だけだというのにサフル王子はかなり先の未来を想像してしまったのか、若干凹んだ顔をした。
二人で過ごす時はずいぶん表情豊かになったものだ。
「そうですね、いつかそんな日も来るやもですね」
お互いに顔を見合わせて、クスッと笑いあって互いの仕事を終えるとゆっくりお茶を楽しむ。
最近の私たちの過ごし方としてすっかり定着した。
サフル王子の客間のテーブルセットに見計らったようにティースタンドとお茶が用意されるのは、さすが王宮のメイドは仕事が出来ると感心してしまう。
うちのメイドや侍女ももちろん仕事はできる人達なんだけれど、王宮で王族に仕える人達はやはりスキルも一歩上を行くというか、痒い所に手が届くというか……。
「このタイミングの良さ。王族の側仕えの方たちは違うわね」
改めて、感心してしまう。
しかも季節のものを使いつつ、私の好物がきちんと用意されているあたりのリサーチ力の高さも恐れ入る……。
私は大好きな紅茶のスコーンにクロテッドクリームを付けて、上品に見えるようにきちんと食べる。