神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~

すると、向かいに座ったサフル王子は仕事の終わった開放感からか勢いよく食べ始めた。

「ペセル、ここは俺の私室の一部だし、この時間は側使えも信用ある長年のベテランしかいないよ。結構、マナーはそこそこで食べたいように食べたらいい」

その言葉に、ゴクッと喉を鳴らす私にサフル王子はニコッと笑った。

「ほら、食べなよ。好きでしょ? イチゴのミルフィーユ」

そう、しっかりしたマナーだと食べるのがかなり難しく神経使うのがミルフィーユ……。
そのミルフィーユ、私の大好物なの。
ロジェスタ公爵家でも、時期が来ると作ってもらって思う存分食べるくらい大好き。
しかし、外では綺麗に食べ切れる自信がなくって興味のないふりしていたはずなのに、どこから好きだってバレたんだろう……。
ついついケーキを見つつ、唸っていると噛み殺しきれない笑い声を漏らしつつサフル王子が正解を教えてくれた。

「この間、出かけるのに迎えに行った時にマーラ嬢が教えてくれたんだよ。お姉様は外では我慢してるけど、ミルフィーユが一等好きなのよって」

どうやら、好物の情報流出はおしゃまな妹のマーラからだったみたい。
私の好物はマーラの好物でもあるんだけれどね。

「すみません。マーラったら、すっかりサフル王子にも遠慮なく話しかけてしまったようで……」
なんだか気分的にもいたたまれなくって苦笑すると、サフル王子は優しげに微笑んで返事をくれる。

「うちでは、俺が末っ子だからね。ペセルのうちに行くとリアンやマーラと話せて楽しいよ。妹ってこんなに可愛いのかと思ったものだよ」

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