神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~

「ナユタ皇女。私には婚約者がおります。次の春には結婚するのです。目の前に彼女がいるのです、離してはいただけませんか?」

言葉こそ丁寧だが、その声は低く冷たいし、瞳は冷気を漂わせている。

「まぁ、その方は妾にすればよろしいわ。私は隣国の皇女ですもの。私がサフル王子の本妻になります!」

私を見下すような視線を向けて、勝ち誇った笑みを称えて王子にくっついて離れないナユタ皇女。

好き勝手させておけば……。
留学初日から、サフル王子にくっついてたのは分かっていた。
アマンダの嫁ぎ先で義妹になる皇女の留学なので、サフル王子が気にかけるのも対王族としての務めなので理解していた。

だが、日に日に皇女殿下の態度が凄いことは耳に入っていたし、理解もしていた。
何度が結婚準備で王宮に行くと、サフル王子が相手をしているのを見かけたし、その度
に勝ち誇った顔をしていたのも気付いていたから。

だが、ここで妾の話を出して私に妾になれとはこの国、パタルの婚約についての詳細は知らないようである。
また、妾の制度についても……。
私は遊学に来て、王子と結婚を目論む割にしっかり勉強していない様子に扇を口元に広げてニヤリと上がる口角を隠した。
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