神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~
エピローグ
こうして、一波乱あったものの私とサフル王子の結婚までは順調に進み、結婚式まで一ヶ月となる頃、皇国でアマンダが無事に皇子を産んだという知らせが届いた。
あの時、プレゼントしたものがきっと使われることだろう。
ほっこりとしつつ、私は自分のお式のためにと日々、マッサージだの入念な手入れをされて、食事にも気を使い過ごしている。
そんな中、王宮に行けばサフル王子と穏やかに過ごす時間も続いている。
一緒にいるのが心地よいと思える相手と結婚できることに安堵の気持ちが強い。
やはり、前世の強引で逃げ場のなかった結婚はトラウマのようになっているのだろう。
結婚式に着る婚礼衣装が出来上がって届いた夜、夢にとある人が立った。
私にとって、大切な相手。
前世の母、デメテルだった。
「ペルセポネ、ずっと見守っていたわ。幸せそうでなによりよ。あの王子様なら大丈夫ね。ハデスはしっかり抑えておきますから、今の人生を謳歌なさい」
優しく微笑んで、そう告げた母の顔はまさに慈愛に満ちたというもので、大きな愛を感じた。
私は、自然と頭を下げたあとに告げる。
「私の勝手で、神界を飛び出して人間に転生してごめんなさい。でも、神様だった頃よりずっと幸せよ。自分で選んでこれたから」
その言葉に、優しく頷くとデメテルは素敵な言葉と共に去った。
「良いのです。守ってやれなかった、母が力及ばなかったのです。今度は邪魔などさせません。春の祝福をあなたに」
春と豊穣の女神デメテルの祝福を受けて、私は温かな気持ちを胸に目覚めた。