神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~
祭壇の前には光沢のあるグレーのフロックコートを着こなしたサフル王子が待っている。
ゆっくりと進んで、辿り着くとサフル王子にエスコートの手が委ねられる。
「どうか、娘をよろしくお願いします」
「二人で幸せになります」
そう、キッパリと答えたサフル王子は私を見つめて微笑んだ。
私も見つめ返して微笑む。
同じ気持ちだった。
どちらが一方に幸せにされるのではなく、二人で幸せになる。
私が前世の結婚では無かった、二人でというその気持ちが嬉しかった。
祭壇の前で、神父様の言葉に返事をして、互いに支え合い生きていくことを誓い合う。
そうして、誓いのキスをする頃、ステンドグラスから燦々と注ぐ光に微笑みあって大聖堂の出入口の扉に向かう。
近くの住人たちが祝いに駆けつけてくれているのが、外の音から想像がつく。
扉を開けて出ると、そこにはたくさんの住人がいて、お祝いの言葉を口々にしていてくれて、温かな気持ちになった。
そこに、溢れるように色とりどりの花が舞い始める。
祝いに気ていた人々も、空を振り仰ぐ。
舞い散る花々に、皆もさらに笑顔になって私は、花の第二王子妃と呼ばれるようになった。
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二人で、支え合い国のためにと王を支えた賢き王弟とその妃は国民からも大層好かれて、その仲睦まじい二人は結婚への憧れとなり、式の最後に花を舞わせるのが祝福のスタイルとして定着したのだった。
ただ、二人の式の時は誰も花を持っていなかったので不思議だとは騒がれたが、後に妃は花の女神に好かれていたからだと囁かれたという。
人間になった女神は、自分で幸せになる努力を続けて、その人生をしっかり謳歌したという。
Fin