神様辞めます!~転生女神は平凡を望む~
実は、この三日後には皇国へ向かって旅立つというアマンダの言葉に、私は茶会を辞して家へ帰ると早速白い糸の在庫を確認する。
「さて、いっちょやりますか!」
そう私は声を上げると、糸とかぎ針を片手にせっせと手を動かし始めた。
私は公爵令嬢としてたくさんのことを学ばせてもらた。
その中でも得意なことが、手芸だった。
刺繍も、編み物も大好きで、冬には家族に何かしらを編むのが趣味だった。
時にはアマンダにも編んではプレゼントしていたので、今回の旅立ちにとリクエストしてくれたのだろう。
私は、いつになく優しい気持ちに胸がいっぱいになりながら手を進める。
生まれてくる子は、アマンダの子は皇国の後継者だ。
皇国は産まれた順で皇位が決まる。
性別は関係ない。だから、皇女でも継承されるのだ。
そんな、私の大切な友人の子が幸多くあるようにと、我が国に伝わる伝統的な図案を編んでいく。
一つずつ気持ちを込めて……。
せっせと編んでいるうちに、気づけば部屋が薄暗くなっていた。
そんな頃、部屋をノックする音にハッとして頭を上げた。
「お姉様、そろそろお夕飯の時間ですよ?」
そう、声を掛けてきたのは末の妹のマーラだった。
マーラは私と十歳違いの妹で、とっても可愛い我が家のアイドルである。
「マーラ!ごめんなさい、すっかり暗くなってるわね。つい、急ぎなものだから集中しちゃて……」
そんな私の言葉に、おしゃまな妹はふぅっと一息つくと言った。
「そんなことだろうと思っていたので、呼びに来たんです」
うぅ、だんだんしっかりしてきて、いい事だけれどお姉様は少し寂しいです。