バックステージ☆
客席が暗くなり、会場に悲鳴が巻き起こった。

ステージの中央が光り、爆音で新曲のイントロが流れる。

ファンたちの手拍子がひとつになってリズムを刻むと、私の心臓も大きく鳴り響いた。


蒼が、アコースティックギターを抱え、手を振ってステージの中央に立った。

歓声が会場に反響する。

私は、蒼の姿に釘付けになって、身動きが取れなかった。



蒼は客席の遠くを眺め、その視線を前列の客席まで移動させた。

ライトで光る蒼の茶色い瞳が、私の額をかすめたような気がした。

「見られた」

鳥肌が立った。

目が合った嬉しさと、気付かれてしまう怖さで、息が苦しくなった。



ライブが終わると、熱の出はじめのような、足に力が入らない、ふわふわした感覚になった。

頭がぼーっとして、ここに居る、という感じが薄くなってしまう。



「かーや、かあや?」


肩を叩かれて、目が覚めたように優成を見た。



「楽屋に寄ってかない?蒼に会っていこうよ」
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