バックステージ☆
スーツ姿の背の高い女性が応接室に入って来て、私たちを見下ろした。

黒いウエーブヘアに、金の大ぶりのピアスがゆれている。

唇には目の覚めるような赤い口紅。

優成と蒼が属する芸能事務所、オールマンブラザーズの社長・早乙女千晶だ。

私が所属する事務所・マキイサオ&ホールディングカンパニーの社長の宿敵でもある。


「昨日は日高優成が、いろいろお騒がせしてしまって、ごめんなさいね。事実は報道のとおりですから」


「事実は違いますっ」


私は思わず早乙女千晶にくらいついた。


「いまさら何を説明しても、最初の報道を覆すのは難しいわ。食って掛かるより、反省するべきじゃない?人気アイドルとして、行動をわきまえたほうがいいわね」


もう痛いくらいに反省しているというタイミングで、追い討ちをかけるように責められるのは辛い。


「それはそうですけど、それなら、日高さんの行動はどうなんですか?」


ポンちゃんが早乙女千晶に、にじり寄った。私はポンちゃんの腕をつかんでとどめた。


「早乙女社長は正しいよ、ポンちゃん」


社長はじっと早乙女千晶をにらんで黙りこくっている。

ポンちゃんは張り詰めた表情で、社長と早乙女千晶とを交互に見ている。

社長がついに口を開いた。
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