バックステージ☆
はやし立てるような声がちらほらと耳をかすめる。

背筋が凍りついた。

マイクを握る手が冷や汗で濡れている。

一瞬、司会者の声が遠のいたけど、なんとか意識を会話に集中させた。


笑顔とは裏腹に、だんだん胸の中を涙の袋が満たしていく。


私の歌を聴きに来てくれてるんじゃないの?

どうして意地悪なことを言うの?

悔しくて、涙腺が緩みそうになった。


けれど、私は野次を聞き取れないふりをして、声がした方向に向かって、わざと笑顔で手を振った。

花彩に涙は似合わないよ。


イントロが始まる。
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