バックステージ☆
普段は器用に練習をサボる私だけど、それから毎日、何度も曲を練習した。

憧れのアーティストの曲をカバーできるというワクワク感のほかに、偶然とはいえ、私の大好きな曲を選んでくれた蒼に、精一杯の歌を聞いてもらいたいと思った。



収録の当日、私は万全で望んだ。


リハーサルでは蒼はものすごく真剣な表情で、ギターをチューニングしていた。

なんとなく、寄せ付けないオーラを放っていた。

緊張でいっぱいのリハーサルが終わって、私の体はカチコチに硬くなった。



本番がスタートした。

歌の途中で、私たちは息を合わせるために見つめあった。


そのときの、少し笑った蒼を見た瞬間、硬くこわばっていたカラダと気持ちが一気に解き放たれた気がした。


蒼がほっそりした指で弾くギターは、ゆったりと甘い音。

まるで私の声を包み込むような、優しくてロマンチックなメロディ。


サビの部分で、蒼が突然ハモリを入れた。

私ははっとして、蒼を見た。

リハーサルではそんなことしなかったのに。

蒼はイタズラそうに笑って、即興で私の旋律の上のパートのメロディを、伸びの良い声で歌った。

ゆったりと楽しんでいるような、リラックスした表情で、蒼は気持ちよさそうにギターを弾いている。

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