キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
ぷろろーぐ
「宙斗くん、好きです。私と付き合ってください!」

「無理です。できればもう……いや、絶対に二度と俺に近づくな」

 穏やかな春の風が頬を撫でる4月のこと。
きらきらと木漏れ日が降り注ぐ中庭で、私は一年間片想いしていたクール王子、高杉宙斗(たかすぎ ひろと)くんに告白をした。

 ──が、フラれるというより、接近禁止命令が彼から発せられる。

えっ、二度と?
私、そこまで嫌われるようなことしたっけ?

いや、私は遠目に宙斗くんを観察し、ひとり胸の内で「きゃーっ、きやーっ」言っていただけだ。

学校一イケメンと噂の彼に群がる取り巻きたちのように付きまとってないし、密かに健全に恋をしていた。なのに……。

「そこまで言う!?」

私、どんだけ嫌われてるの!
嘘、なんで?

「超ショック!!」

 心の叫びがつい、口からもれた。
頭を抱えてしゃがみ込んでしまう私から、現在進行形で宙斗くんはジリジリと後ずさっている。

とはいえ、こっちとしても理由がわからなければ諦めきれない。なんとしても、理由を聞きださねば。
納得させてほしい、ちゃんときみを諦めさせてほしい。それくらい、ずっと好きたんだから。

「ちょっと待ったー!」

 叫びながら、逃がさまいと彼の腕をむんずと掴んだ。その瞬間──。

「や、やめてくれぇぇーーっ」

 聞いたこともない悲鳴に、見たこともない真っ青な顔。とにかくクール王子の名が泣くほどに、彼は取り乱した。

「……え?」

 それはもう嵐のように、私の頭の中から思考を根こそぎ吹き飛ばす。

 瞬時に、〝ああ、これは夢か〟と思った。

 ガラガラと崩れる、王子像。しばらく私は、驚愕の表情でその場に尻餅をついた彼を呆然と見下ろすのだった。

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