キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 じーっとスケッチブックを見つめていると、頭上から「はぁっ」と仕方ないなと言わんばかりのため息が降ってくる。

「向こうに着いたらな」

「え……」

 スケッチブックから、視線を宙斗くんに移す。宙斗くんは首筋に手を当てながら、ほんのり頬を赤く染めてチラッと私を見る。

「見たいんだろ」

「あ……はいっ、見たいです! 見せてください!」

 こぶしを握って、ぶんぶんと振る。そんな私を見た宙斗くんはポカンとしたあと、クッと喉の奥で笑う。

「え……っ」

 衝撃映像を目撃した私は、その顔をまじまじと凝視する。

 ええっ、待って。今、普通に笑ってたよね? やばい、笑った顔も素敵すぎるーっ。

 私は心の中で叫んで、本人には言わないことにした。言ったらきみは、また仏頂面になってしまうから。

「楽しみだなぁ、早く着かないかな~っ」

 密かにきみの笑顔を堪能しつつ、今日が最高の一日になる予感がした私は心躍らせていた。

「大げさだな」

 はしゃいでいる私を見て呆れ混じりにそう言った宙斗くんの笑顔を、幸せな気持ちで目に焼きつけていたときだった。

「なーにやってんの、楽しそうじゃん」

 私の左側から腕が伸びてきて、ギュッと誰かに抱きしめられる。目を見開いて、弾かれるように顔を上げると満面の笑みを浮かべる楓と至近距離で目が合った。

「か、楓!」

    

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