キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「よう、おふたりさん」

 片手で私を抱きしめたまま軽く手を上げる楓は、黒いシャツにワインレッドのブイネックティーシャツを着合わせている。下は黒のスキニーパンツで、イケてる今どき男子って感じだ。ただ、楓の性格を知っているからか、チャラいとしか思えない。

「挨拶はいいから、とにかく離してよ!」

 しかも宙斗くんの目の前で、なにしてくれとんじゃい! まぁ、宙斗くんは私のことなんてミジンコほど興味はないと思うけど。

 私は楓の顔を手で押し返しながら顔を上げる。すると目の前にいる宙斗くんの表情を見て、言葉を失った。眉根を寄せて、冷ややかな瞳で楓を見ていたからだ。見たことのない表情に、彼は本当に宙斗くんなのだろうかと驚く。

「あの、宙斗く……」

「俺の彼女なんだけど」

 その言葉は、私を抱きしめている楓に向けられたものだった。私は抵抗するのも忘れて、困惑しながら怒っている様子の宙斗くんを見つめることしかできない。

「学校の外で偽装する必要ないじゃん?」

    

< 101 / 178 >

この作品をシェア

pagetop