キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 私がいつ、ナンパされてたっていうんだろう。宙斗くんとはぐれてから今まで私が会話したのは、あのかき氷屋さんのお兄さんだけだ。愛想も感じもよかったのに、とお兄さんがとのやりとりを思い出していると、宙斗くんの目が据わった。

「気づいてないところが、よけいに危なっかしいんだよ。いいから早く掴まれ」

「と言われましても……宙斗くん、私に触られて平気なの?」

 素朴な疑問をぶつけると、彼は「あ」という顔になった。

 やっぱり忘れていたんだ。でも、これは宙斗くんが私に慣れてきてくれているということだ。少なくとも、隣を歩けるくらいには。

 私は悩んだあげく、彼の手からひとつだけかき氷のカップを取りあげる。それから宙斗くんに背を向けて、顔だけで振り返った。

「宙斗くん、リボンを外してくれない?」

「は? なんで俺が……」

「かき氷を落としそうで怖いの! リボンの端を引っ張るだけで外れるから、お願い」

「仕方ねーな」

 宙斗くんは渋々といった様子で、私のリボンをほどく。髪がさらりと肩に流れて、私は彼に手を差し出した。

「ありがとう、リボンもらってもいいかな?」

 いつもは私が差し出す側なので、少し新鮮だった。

 宙斗くんはおずおずと、私にリボンを近づける。それを握ると、ふたりで並んで歩きだした。

「あ、宙斗くん! かき氷なんだけどブルーハワイとイチゴ、どっちの味がいい?」

「ブルーハワイ」

「半分こしようね!」

    

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