キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 そう思うほど、宙斗くんの表情に、言葉に、仕草に翻弄される。私の体じゃないみたいに心臓がドキドキして、変な汗をかいたりして忙しい。

「はぁ……あれ?」

 ため息をついてうつむいたとき、手首に巻いていたリボンがないことに気づく。キョロキョロと周りを見渡すと、沖のほうに流されていく赤いリボンを発見した。

「待って、私のリボン!」

 両手で水をかいて、前に進む。リボンだけを見つめてどんどん進んだせいか、水面は胸元まできていた。

「おい、危ないから戻れ!」

 宙斗くんの制止する声が背中越しに聞こえたが、リボンにもう少しで手が届きそうだったので、私はそのまま足を進める。

「おい、飛鳥!」

 名前を呼ばれたのと同時にリボンに手が届き、その手を見せるようにして持ち上げると彼を振り返った。

「やったよーっ、宙斗くん。リボンとれ──」

 そう言いかけた瞬間、深みにはまったのかズボンっと足場がなくなった。彼は慌てたように、水をかきわけながらこちらに向かってくる。

「飛鳥!」

 ──宙斗くん!

 傾いていく体は、ついに海の中へドボンッと沈む。それでもリボンだけは離すもんかと、強く握りしめた。体を浮かせようと、空いているほうの手をバタバタと動かす。それを迷いなく誰かの手が掴み、引っ張られるのに合わせて海面に顔が出た。

「ぷはっ」

    

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