キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 海を満喫してホテルに戻ってくる頃には、午後五時を回っていた。あのあと、私と宙斗くんが砂浜に到着したタイミングで楓と美代、クリスさんたちと合流し、一緒にビーチバレーを楽しんだ。

 今はビーチにある簡易シャワーで落としきれなかった砂や海水をスッキリさせるため、大浴場の温泉にやってきている。

「飛鳥って、うしろから見るシルエットがキレイよね」

「へっ!?」

 シャワーの水を止めた瞬間、先に湯船に浸かっていた美代が私の方を見ながら言った。

 美代ってば、急になに言い出すんだか。

 私は顔を真っ赤にしながら、女の子同士だっていうのにタオルで体を隠して湯船に入る。

「照れちゃって可愛いわね」

「そ、それにしても東堂先生がいたのは、びっくりしたね!」

 私は妖艶に微笑んでいる美代から視線をそらして、話を変えた。すると美代は深い息を吐いて「そうね……」と呟くと湯気が立ち込める天井を見上げる。その顔が憂いを帯びているように見えて、私は思わず「なにかあった?」と尋ねる。

 美代は少し目を見開くと、観念したようにフッと微笑んだ。

「東堂先生って裏がないっていうか、純粋なまま大人になったって感じじゃない?」

「確かに真っすぐだよね。美代の水曜日候補なんでしょう?」

 うんうんと頷いてみせると、美代は頬に張り付いた髪を耳にかけて視線を揺れるお湯の波紋へ向けた。

    

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