キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 そろりと宙斗くんの様子を伺うと、彼も同じタイミングでこちらを見る。その瞬間、宙斗くんの頬がボッと赤くなった。

 えっ……宙斗くんまさか、照れてるの?

 私は驚くのと同時に恥ずかしくなってきて、顔に熱が集まっていく。

「もうっ、変なこと言わないでよ、楓!」

「へいへい、怒るなって」

「わっ」

 楓は私の方へ手を伸ばすと、ワシャワシャと髪を撫で回してきた。

「まったく、怒りたいのは俺のほうだっつーの」

 謎の言葉を発した楓は、チラリと宙斗くんに視線を向けるとニヤリと笑う。

「なんだよ怖い顔して、うらやましいのか?」

 え、宙斗くんが怖い顔?

 楓の言葉に促されるように、彼の顔に視線を向ける。

「は? んなわけねぇーだろ」

 そう反論した宙斗くんは眉をしかめて、ひどく憂鬱そうな顔をしていた。

 うわっ、宙斗くん超絶機嫌悪そう。絶対、楓がからかったからだ。

「あっそ。それにしても飛鳥の髪、風呂のあとだからか柔らかいな。触らないとか、もったいない」

 楓はよく、私の髪を触る。なんでも、小学生の妹にせがまれて髪を結ってあげていたら、癖になったのだとか。髪のセットに関してはプロ級で、流行りの編み込みとかも頼むとやってくれた。将来は美容師さんになるのが夢らしく、楓にぴったりな仕事だなと思う。

「おい、あんま触るなよ」

    

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