キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「はーい」

 扉の前で私を呼ぶ宙斗くんに駆け寄ると、ふたりで部屋を出た。そして一階の売店で飲み物をふたつ買うと、部屋がある三階に戻ってくる。

「荷物持ち、いらなかったんじゃ……」

 結局、買った飲み物は宙斗くんが鞄に入れて持ってくれている。そんな私の呟きが聞こえたのか、宙斗くんはチラリと私を見て口を開く。

「そんなの口実だ」

「え? 口実って?」

「お前の部屋に行くぞ」

 ――えっ!

 ドキッと心臓が跳ねて、私は目を白黒させる。

 ふたりきりで、私の部屋に……。なに、このシチュエーション。私、心の準備ができてないのですが!

 ひとりであたふたしていると、宙斗くんはスケッチブックを鞄から取り出して、私に見せる。

「そろそろデッサンしたい。思いついたアイデアがいくつかあって、ウズウズしてんだよ」

 あ、なるほど。だから宙斗くんは、私の部屋に行こうなんて言ったんだ。少しガッカリしたような、ホッとしたような……。

 複雑な気持ちで苦笑いを返すと、ふたりで私の部屋に向かった。

「それで、どんなアイデアが浮かんだの?」

    

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