キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 ベットの上でさっそくデッサンを始める宙斗くんの隣に座ると、スケッチブックをのぞき込む。そこには女の人の首と、そこに巻かれたリボンのようなものが描かれていた。

「チョーカー、これはさっき浮かんだ」

 宙斗くんはデッサンする手を止めずに答えてくれる。

 すごいな、さっき思い浮かんだものをすぐに絵にできるなんて……。しかも、これが実際に形になるんだよね。完成が早く見てみたいな。

「でも、宙斗くん。チョーカーなんて、どのタイミングで思いついたの?」

「……どこでだと思う?」

 手を止めた宙斗くんが、私をじっと見つめてくる。その瞳に熱がはらんだ気がして、私は息を詰まらせた。

 え、なにこの顔……。

 見たことのない宙斗くんの表情に、私はなにを言えばいいのか言葉が見つからない。ただひたすらに、その吸い込まれそうな瞳に目を奪われていた。

「飛鳥、返事は」

「っ……わからな……」

 私の名前がこんなに甘い響きに聞こえたのは初めてで、心臓がせわしなく動く。

「誰にもちょっかい出されないように、首輪をつけられたらいいのにって思ったときだ」

 別に、宙斗くんは誰とは言っていない。なのに頭には、先ほど楓が私の頭を撫でたときに見せた宙斗くんの不機嫌そうな顔が浮かんでいる。

 まさか、私に向けて言ったんじゃないよね? だって宙斗くんは、女嫌いなんだから。

    

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