キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 勘違いも甚だしいと、私は思考を振り払ってしどろもどろに「へ、へぇ~」と返す。視線も合わせられなくて、あきらかに動揺してるのがバレバレだった。

「ちなみにテーマは、独占するアクセサリー」

 そう言った宙斗くんの顔は、俯いているので見えない。でも、その声にむせ返るほどの甘さが込められているのは確かだった。

「っ……そ、そうなんだ」

「女なんて嫌いなはずなのに、俺はお前が……」

 なにかを言いかけた宙斗くんは、切なげに私に手を伸ばす。それは私の頬をすり抜けて、髪のリボンを掴んだ。

「え……」

 スルリと外されたリボン、ハラリと肩に落ちる髪。目をまん丸にして固まる私の首のうしろに、リボンを持ったままの宙斗くんの手が回ると、首がやんわりとなにかに締めつけられる。手で自分の首に触れてみれば、私の髪につけていたリボンが結ばれていた。

「お前は……俺の彼女だろ」

 懇願するように必死に紡がれる言葉は、私の胸を強く突く。その行為に、言葉に、眼差しに、なんの意味があるのかはわからないけれど、ただ言えるのはきみが好きすぎて死にそうだってこと。この関係が偽装であっても、彼女には変わりないんだから、きみの言葉に頷いてもいいんだよね……?

「飛鳥」

「っ……う、うん……」

 催促するような言い方に、私はコクリと頷く。

「なら……」

 ふいに、目の前が陰った。

 ──え?

    

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