キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 顔を上げようとした瞬間、視界が反転してトサリと柔らかなマットレスが背中に当たる。燃えるような情熱を宿した瞳と視線がかち合って、私は彼に押し倒されたのだと気づいた。

「あっ、あのう……宙斗くん。そんなに、私に近づいて大丈夫なの?」

 本当は、そんなことを聞きたいんじゃない。なにを言いかけたのか、どうしてこんなことをしたのか、たくさんの疑問が胸の中に渦巻いてる。なのに、どれも言葉には出来なかった。声に出してしまったら、今の関係が壊れてしまう。だって宙斗くんは女である私のことが嫌いで、そもそも偽装じゃなければ一緒にいられるはずがなかった人だから。

 だからきみの想いを知ることも、私が想いを伝えることも怖かった。

「俺、なんでかお前には触れられる気がする」

 静かに伸びてくる宙斗くんの手、その指先がそっと頬にたどり着く。

「あっ……」

 宙斗くんが私のほっぺに触った!

 みるみる目を見開く私と同じように、宙斗くんも驚きを隠せない様子で自分の手を見つめている。

「俺……手も震えないし、気持ち悪くもない。ただ……」

「た、ただ?」

「柔らかくて、あったかいんだな」

「っ……そ、そっか……」

 なんだろう、この時間。大好きな人に触れてもらえてうれしいのに、ドキドキして胸が苦しい。私は潤みだす瞳で、助けを求めるように彼を見上げる。

「やばい……上目遣いで見んな」

    

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