キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 無意識なのか、宙斗くんは私に手を差し出す。

 でもここ、学校だし……。しかも宙斗くん、私に触って大丈夫なの?

 旅行で克服できたようにも見えたけれど、初めて出会ったときの女嫌いの印象が強くてまだ信じられない。

「おい、どうした」

 いっこうに手を取らない私を、キョトンとした顔で見る宙斗くん。

「どうしたっていうか……宙斗くんは私に触って平気なのかなぁーって。あと、ここ学校なので恥ずかしいなーと……」

 モゴモゴと答える私に、宙斗くんはハッとしたような顔をする。その顔はじわじわと赤みを帯びて、宙斗くんはさりげなく手を下ろした。

「わ、悪い……。お前のこと、本当の彼女みたいに扱って」

「あ……」

 だったら本当の彼女にしてくれればいいのに――なんて、贅沢なことを言ってみる。あの手、余計なことを言わないで握っておけばよかったな。

 残念に思っていると、宙斗くんが背を向ける。

「い、行くか」

「あ……うんっ」

 慌ててそのうしろを追いかけると、私たちは教室に向かった。

「キレイだなぁ……」

 授業合間の十分休憩。トイレに席を立った宙斗くんを見送り、私は借りたスケッチブックを開いて眺めていた。

    

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