キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
 膝に両手をついて、屈むと少し体が楽になった。低い姿勢のまま周りを見渡していると、道路向こうにある細道に宙斗くんの背中を見つける。

「いた……!」

 休むのをすぐにやめて、信号が青になった瞬間に向かいの道に渡り、大きく息を吸い込むと彼の背中に向かって叫ぶ。

「宙斗くーん!!」

 まだ距離はあったが、声は彼の耳に届いたらしい。こちらを振り返って、驚愕の表情を浮かべた宙斗くんと目が合った。

「さっきは、ごめんなさい!」

 私は彼の前までたどり着くと、息を整えるより先に謝った。そのまま、矢継ぎ早に話を続ける。

「でも私っ、宙斗くんのことをわざと言いふらそうとしたわけじゃ――」

「言い訳は聞きたくない。謝りたいって言うなら、もうこれ以上俺に近づくな」

「あっ……」

 重く鋭い悲しみが胸を襲う。出会ったばかりの頃よりも、もっと確かな拒絶。彼に近づこうと一歩踏み出すと、「来るな!」と牽制された。

「だから女は嫌なんだ。簡単に平然とした顔で裏切るだろ」

「宙斗くん、それは……っ」

「偽装カップルの話を引き受けたのも、俺を侍らせて他の女子たちに自慢したかったからじゃねーの?」

「そんなことっ――」

「正直言って、お前のことが信じられない」

    

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