キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「え……」

 顔を上げると、美代は清々しい顔をしている。週替わりの恋をやめたって、全員と別れたということだろうか。

「飛鳥の恋する姿を見てたらね……。たったひとりに向ける好きが澄んでいるみたいにキレイで、重みがあって、価値のあるもののように見えたの」

「美代……」

「だから私、本気で東堂先生に恋してみようと思う」

「あ……うんっ、私も全力で応援する!」

 彼女の両手をギュッと握って笑って見せれば、美代は「ありがとう」と照れ臭そうにはにかんだ。

「そう思わせてくれたのは、飛鳥のおかげよ」

「大げさだよ」

「ううん、そうなの。だから、ずっと私の見本でいてほしい」

「見本?」

「そう、見本。だからちゃんと向き合って、全力の片想いの結末を私に見せて」

 その言葉に、私の心は震えた。

 誰かに本気で恋をする決意をした親友の姿に、私も負けていられないと思った。美代は私を見本だなんて言うけれど、反対だ。彼女の恋する姿に、私は励まされている。

「私……」

「飛鳥!」

 私の言葉を遮ったのは会いたくて、会うのが怖い人だった。その姿を見るだけで、心が不安に揺れだす。

「俺の話を聞いてほしい、伝えたいことがあるんだ!」

    

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