キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「いい報告、待ってるわ」

 美代、ありがとう。もし美代が困っていたら、今度は私が助けるからね。全力で相談にだって乗るから。

「っ……ああ、飛鳥は大好きな親友だ」

 切なげに笑った楓の目尻には、涙が滲んでいるように見えた。心配になって声をかけようとしたら、楓は「早く行け」と顎でしゃくるようにして私を促す。

 楓は宙斗くんに、俺の大事なもんを譲ると言っていた。もしかしたら、きみは私のことを――。そこまで考えて、すぐに首を横に振る。

 そうだったとしても、送り出してくれたきみの決意を踏みにじるようなことはしてはいけないと思うから……。

「うん、ありがとう楓」

 だから、私はきみが次の恋を見つけるまできみを親友として支えよう。楓に背を向けながら、私はそんなことを考える。

 ――本当に、ありがとう。

 心の中でもう一度、お礼を伝えた私は宙斗くんに引っ張られるようにして踊り場をあとにする。どこまで行くのだろうと思っていたら、そこは中庭だった。

 そう、私が彼に告白をしたときと同じ場所。中庭の中央にある桜の木の下までやってくると、宙斗くんはピタリと足を止めた。

    

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