キライが好きに変わったら、恋のリボン結んでね。
「お前も俺のデッサン見ただろ? ペアルックのやつ」

「あ、うん! 片方はブレスレットになるんだよね」

「お前のそれ、俺のブレスレットにしたい。だから代わりに……」

 宙斗くんはポケットに手を入れると、スルリと赤いリボンを取り出す。その両端にはピンク色の石が埋め込まれた、ハート形のアクセントがついていた。

「それは……?」

 リボンに目を奪われたまま、私は尋ねる。

 宙斗くんは今まで私がつけていたリボンを器用に自分の手首に巻きつけると、新しいリボンを両手で持ち直して教えてくれる。

「ローズクォーツ、愛情を注ぐと相手に通じるらしい」

「あ、愛情?」

「そう、だから……」

 宙斗くんはリボンの両端を掴んで、ふわりと上げる。風も手伝って、私の首のうしろにリボンが回った。まるでリボンで抱きしめられているみたいで、私の頬がじんわりと熱を持つ。

「俺の心も伝わるといいと思って」

「宙斗くんの心って?」

「見かけだけじゃなく、内面も含めて俺を見つめてくれた飛鳥のことが……」

 木々の騒めきも、風の音も、人の声も聞こえない。時さえ止まってしまったかのような静寂の世界で、きみは告げる。

「好きだ」

    

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